ひらめ VS からすがれい : 「えんがわ」の栄養成分の違いは?
「ひらめのえんがわ」って知っていますか? 「えんがわ」とは、背びれと尻びれの付け根の部分。ひれを動かす筋肉が発達しているので歯ごたえがよく、あぶらも乗っていておいしいところです。ひらめはもともと高級魚ですが、1匹から少量しか取れないえんがわは、とくに珍重されています。
「えんがわ」はおもに寿司や刺し身などにされます。ただしお値段がリーズナブルな回転寿司で出てくるのは、ひらめではなく、からすがれいという魚のものがほとんど。「ひらめよりあぶらっぽい」と嫌われることもあるようです。
からすがれいのえんがわは、栄養学的にみても脂質(あぶら全般の総称)が多いのでしょうか。日本食品標準成分表には、えんがわのデータは載っていません。そこで別な資料をもとに、両者の成分値を比べてみました。
- ●えんがわ (100gあたり)
-
エネルギー※
(kcal)たんぱく質
(g)脂質
(g)炭水化物※
(g)ナトリウム
(mg)灰分
(g)水分
(g)資料 ひらめ(天然) 225 17.3 16.2 0.0 - 1.2 67.8 1) ひらめ(養殖) 342 16.0 29.2 0.0 - 1.1 55.5 1) からすがれい
(オホーツク海産 5・7・9・11月 大・中・小平均)264 11.6 22.9 0.0 - 0.9 66.5 2) からすがれい
(羅臼産 7月 大・中・小平均)320 12.1 28.6 0.0 - 0.8 60.9 2) からすがれい
(東部ベーリング海産 8・12月平均)294 10.4 26.6 0.0 - 1.6 61.8 3) - ●身 (100gあたり)
-
エネルギー※
(kcal)たんぱく質
(g)脂質
(g)炭水化物※
(g)ナトリウム
(mg)灰分
(g)水分
(g)資料 ひらめ(天然) 103 20.0 2.0 0.1未満 46 1.2 76.8 4) ひらめ(天然) 103 22.5 0.9 0.0 - 1.6 76.6 1) ひらめ(養殖) 124 21.2 3.7 0.1未満 42 1.2 73.9 4) ひらめ(養殖) 116 23.1 2.0 0.0 - 1.5 75.4 1) からすがれい
(オホーツク海産 5・7・9・11月 大・中・小平均)142 13.9 8.9 0.0 - 1.1 77.2 2) からすがれい
(羅臼産 7月 大・中・小平均)185 14.6 13.2 0.0 - 0.9 72.7 2) からすがれい
(東部ベーリング海産 8・12月平均)158 13.9 10.6 0.0 - 1.1 75.1 3) からすがれい
(東部ベーリング海産 夏期 S・M・L平均)152 13.7 9.2 2.0 - 1.5 73.7 5) からすがれい(米国) 186 14.4 13.8 0.0 80 1.0 70.3 6) - ※ 資料1)、2)、3)、5)のエネルギーと炭水化物は、以下のように日本食品標準成分表と同じ方法で算出しました。
エネルギー:たんぱく質・脂質・炭水化物の重量に、それぞれのエネルギー換算係数をかけた合計値。
炭水化物:総重量からたんぱく質・脂質・灰分・水分の重量を引いた値。
(ただし算出値が0以下となった場合は0としています。)
生き物ですから、脂肪分の多さは、大きさ、性別、季節、海域、養殖法などによって差がありますし、魚のおろし方によっても微妙に変わります。残念ながらえんがわのデータは少なく、あまりよい比較にはなりませんが、調べた範囲では、確かにからすがれいのえんがわのほうが、天然ひらめのものより脂質が多めでした。でも養殖ひらめのものと比べると、逆にやや少なめです。
寿司や刺し身にしておいしいかどうかは、あぶらの量だけでなく、あぶらの性質や他の成分の影響もあるのかもしれません。ひらめもからすがれいも命をいただくものですから、素材の特長を活かした料理でおいしくいただきたいですね。
資料:
1) 日本水産学会誌 52:1043-1047 (1986)
2) 北海道立釧路水産試験場事業報告書 1989:273-292 (1990)
3) 日本水産株式会社中央研究所報告 12:24-35 (1982)
4) 五訂増補日本食品標準成分表
5) (独)農林水産消費安全技術センター 調査研究報告 4:127-139 (1980)
6) 米国農務省 National Nutrient Database for Standard Reference Release 18