「市場に出ているものは安全」というのはなぜ? -放射性物質と食品の規制-:教えて!イースマ

「市場に出ているものは安全」というのはなぜ?
-放射性物質と食品の規制-

 放射線による健康被害が食べ物から広まらないようにするため、一部の地域では2011年5月現在も作物の出荷制限が続いています。でも消費者の中には、売っているものが安全なのか不安に思う人が少なくないよう。そこで現在、食べ物の放射性物質がどうやって規制されているかをまとめてみました。  (最初にこちらを読んだほうがわかりやすいかもしれません。)



■食べても安心な目安はあるの?

 原子力災害で飛び散った放射性物質は、直接または水や地面を通じて、食べ物を汚染する危険があります。そこから健康被害が起きる危険を避けるには、作物の出荷や飲食の制限が必要になります。


 災害時の飲食の規制については、国内外にいくつかのガイドラインが出ています1)。これらは人の健康を直接保証する基準ではなく、食べ物の規制に踏み切るラインを決めるための値です。人の健康には、飲食以外の原因も関わっていますから、そこは区別しておきましょう。


 ガイドラインはいずれも、健康障害につながりにくい範囲一時的に平常時より緩やかな基準にするよう勧めています。もしも平常時並みのレベルで制限すれば、出回る食料は少なくなりますね。すると飢えや栄養不良、混乱などの健康被害は、逆に起こりやすくなってしまうわけです。そのようなリスクも併せて考慮されています。


  • 世界保健機関(WHO) : 全身への影響度で年間5ミリシーベルト、甲状腺への影響度で年間50ミリシーベルト(全身の影響度に直すと年間2ミリシーベルト)1)
  • 国際放射線防護委員会(ICRP) : 全身への影響度で年間5-50ミリシーベルト、個々の臓器への影響度で年間50-500ミリシーベルト。規制する場合は、1種類の食品につき、全身への影響度で年間10ミリシーベルトがほとんどの場合で適切1)
  • コーデックス(CODEX、国際的な食品規格等を作る国際組織) : 国際貿易される食品については、全身への影響度で年間1ミリシーベルト6)
  • 原子力安全委員会 : 放射性セシウム、ウラン、プルトニウム及び超ウラン元素は、全身への影響度で年間5ミリシーベルト。放射性ヨウ素は甲状腺への影響度で年間50ミリシーベルト5)



■震災後の日本ではどう考えられているの?

 このような情報をもとに、日本では東日本大震災後、ヨウ素とセシウムについて「暫定規制値」が決まりました。この2つは震災後もっとも多く放出されたと思われる放射性物質です。放射性ヨウ素は甲状腺に集中しやすい性質があるので、甲状腺への影響度で判断します。


  • 放射性ヨウ素: 甲状腺への影響度で年間50ミリシーベルト
  • 放射性セシウム: 全身への影響度で年間5ミリシーベルト 



■食品によって違うの?

 上記の暫定規制値は、食品全体から受ける影響度に対する値です。実際のチェックは、いくつかの食品グループに分けて行われます。


  • 暫定規制値を、いくつかの食品グループに振り分け
     (飲料水/牛乳・乳製品/野菜類/穀類/肉・卵・魚・その他)
          
    日本人がその食品を1日に食べる重量、食べる日数、年代などを考慮
    影響度(単位:シーベルト)は放射能の強さ(単位:ベクレル)に換算
          
    飲食物摂取制限に関する指標2,3,4)  (ベクレル/食品kg; 2011年5月現在)


食品グループ

放射性ヨウ素

放射性セシウム

ウランプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種
乳幼児用食品 20 1
飲料水

 300

200
牛乳・乳製品

300
(乳児用食品と乳児用調製粉乳用の水は100)

野菜類 2,000
(根菜、いも類を除く)
500 100 10
穀類
肉・卵・魚・その他 2,000
(魚介類のみ)


 2011年5月現在、ヨウ素とセシウム以外の放射性元素には、暫定規制値はないのですが、食品の指標には、ウランその他の元素も入っています。これは震災以前から、内閣府の原子力安全委員会が設定していた指標と同じ値。異なるのは放射性ヨウ素の規制値で、乳児に対する乳・乳製品は、もとは成人と同じでしたが、現在は、CODEXのガイドライン※※と同じになっています。また魚介類についても、震災後の指標で設定されました。


 これらの値は、「食べ物が1種類の放射性物質に汚染されている」とした場合の値なので、指標を超えた放射性物質が複数見つかった場合は、検出値が低めでも制限されたり、緊急に対処されたりする可能性があります。


※原子力安全委の指標は、「ある時点で汚染された食品を、1年間毎日食べ続ける」という前提で、放射能が自然に減っていく(物理的減衰)分も見込んで決められています。プルトニウムやウランは、セシウムと同様年間5ミリシーベルトとして計算されています5)

※※ CODEXでは国際貿易される食品の規制の指針を、乾燥・濃縮していない状態で、放射性セシウム1,000ベクレル/kg、放射性ヨウ素・放射性ウラン100ベクレル/kg、放射性プルトニウム10ベクレル/kg(乳幼児の場合1ベクレル/kg)などとしています6)。この値はWHOや国際原子力機関(IAEA)でも、緊急時の規制の推奨値となっています。



■実際の規制はどう行われているの?

 農水産物は、産地の自治体でサンプルを取って検査されます。分析には通常は数日必要。指標を超えるものは、食品衛生法に基づいて出荷制限または摂取制限※※※され、廃棄されるしくみです。家庭菜園や産地の直売所のものも、同じように考えて対処してください。


※※※放射能が高くて早めの対策が必要なものについて、出荷する/しない/既に出荷したなどに関わりなく出される制限です。



■暫定規制値は変わる可能性があるの?

 原子力発電所事故の発生後、できるだけ早く暫定規制値を発表する必要があったため、発がん性のリスクについては詳細には検討されていません。ヨウ素とセシウム以外の放射性物質の調査・検討も十分ではありません(2011年5月現在)。これらについては今後も食品安全委員会で検討を進めていくとのことです。


 放射性物質の量が増えたことも、健康被害について明確にわかっていないことがあるのも、心配です。でも「わからないことがある」という現実を含め、自分たちの問題として対処していきましょう。よく見て聞いて考えて行動したいですね。食べたり飲んだりすること自体を制限したり、風評に踊らされたりすることも、健康にはマイナスです!



■参考資料

1) 食品安全委員会: 放射性物質に関する緊急とりまとめ
2) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知: 放射能汚染された食品の取り扱いについて
3) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知: 魚介類注の放射性ヨウ素に関する暫定規制値の取り扱いについて
4) 厚生労働省健康局水道課長通知: 乳児による水道水の摂取に係る対応について
5) 原子力安全委員会: 原子力施設等の防災対策について
6) CODEX: General Standard For Contaminants and Toxins in Food and Feed




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